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一口に杖と言ってもいろいろと種類があります。
一番皆さんの頭に浮かぶのはT字杖と呼ばれる一点杖だと思います。
使用する方の身体の状態や使い方、好みによって使い分ける必要があります。
そういった杖の中に4点で接地して安定した歩行が期待できる4点杖があります。
平坦な道では一点杖よりも安定した歩行感があります。
そんな4点杖の特徴や用いる時の注意点、実際に使用して歩行している様子をご紹介します。
4点杖とは

4点杖の特徴
4点杖とは、杖先が4本に分岐している杖です。
杖先が3本に分岐しているものもあり3点杖と呼ばれています、
これらは多点杖(多脚杖)と呼ばれていますが、4点杖の方がよく使用されています。
多点杖(多脚杖)は、一本杖では歩行が不安定な方に有効です。


4点杖のメリット
一般的な杖は、地面に接する点が1点であるのに対して、杖先が分岐していて4点で地面に接地することが特徴です。
地面に接する点が多いので、一般的な1点杖よりも安定性が増します。
さらに4点に分かれた杖先部分の面積が広い方が安定感が増します。
1点杖では安定性が足りずふらついたり、転倒したりする不安が強い方は、4点杖の使用も検討してみてはいかがでしょうか。
4点杖のデメリット
4点杖は杖の先が分かれているため、平坦な歩道などでは安定感を発揮しますが、階段や砂利などの段差や凹凸がある場所では4点をしっかりと接地できずバランスを崩してしまう危険性があります。
そのため、普段よく歩く道や場所の状況をしっかりと把握して選ぶ必要があります。
一般のご自宅、病院や施設などではよく使用されています。
傾斜になっている急な坂道や施設入口などのスロープも平坦な道を歩くときと同じ感覚で杖を突くと4点すべてが接地しきれず不安定になりますので注意が必要です。

脚の面積が小さめのものも大きいものも選べます。
4点杖での歩行

4点杖の選び方
杖を選ぶ際に重要なことは杖の長さです。
長すぎたり短すぎたものを使うと、十分杖の役割が果たせないどころか余計にふらつきや転倒のリスクを高めたり、歩行姿勢が悪くなって疲れやすくなったり身体を痛めたりする可能性が高まります。
杖を選ぶときには、まず自分の身長に合った長さのものを選びましょう。
身長と杖の長さなど、杖を選ぶときの適切な目安はあります。
一般的には大腿骨大転子(太ももの付け根外側の骨の出っ張り部分)の高さが良いと言われています。


接地面の広さや杖自体の重さも実際に使って歩いてみて確認しておきましょう。
接地面が大きいと平面では安定感が増しますが、それと同時に足を引っかけてしまう危険性も高まります。
また、重く感じる杖だと持って歩いているうちに疲れてしまったり、腕を痛めたりする恐れがあります。
人によって腕や足の長さの違いもあるので、杖を用いて実際に歩いてみて、歩きやすいものを選ぶことがポイントになります。
4点杖で歩行訓練

以前に「階段昇降訓練」の記事でもご紹介したGさん(仮名)60歳女性が最近4点杖を使用し始められたので、歩行訓練の様子をご覧いただきます。
Gさんは小児ポリオの影響で知的障がいと右片麻痺があります。
糖尿病もあり、5年ほど前に脳梗塞も発症されています。
右上肢の拘縮と右足関節(足首)の背屈(つま先を挙げる)制限があり、ついこの間まではT字杖を用いて歩行されていました。
しかし、最近歩行時の体幹バランスが不安定になりがちで、自宅近辺を散歩中に転倒が増えたこともありT字杖から4点杖に変更することになりました。
4点杖を使って歩いてみると見た目にも歩行が安定していましたし、ご自身も「歩きやすい」とのことですぐに導入しました。
最初、2本ケアマネージャーさんに持ってきてもらって試用してもらいました。
最初に試用したものは、もう一方に比べると接地面がやや広くて軽いものでした。
以前に「杖を使って歩くと腕が痛くなる」とおっしゃっていたので軽めのものをチョイスしたのですが、歩行中段々ぎこちなさが出てきてよく杖を蹴ってしまったりしていました。
一点杖に比べれば安定した歩行でしたが杖の脚にご自身の脚が当たるのは危険なので、少し重いが接地面が狭いものを試用してみると一本目よりもしっかりとした足取りで杖の脚を蹴ることもなくなりました。


4点杖に変更して随分歩行が安定しましたが、2点の課題があります。
1つは、小歩になること。
小刻み歩行ですね。歩幅が小さく、ちょこちょこ歩きになる。
特に患側は出しにくいようで、時折すり足気味にもなります。
「ゆっくりでいいから出来るだけ大きく足を振り出そう」と声掛けするとその時は大きく出せるのですが、2,3歩歩くとまたすぐに元の戻るの繰り返しになります。
1点杖の時はそんなに気になるほどではなかったので、4点杖に慣れてくれば克服できると思うので数をこなしていかないといけませんね。
もう一つは杖のグリップの握る位置。
これも1点杖の時はなかったのですが、グリップのラバー部分を超えてアルミの部分まで指がかかってしまうことがあります。


グリップの根元の方を持つと手が滑って杖を突き損ねてバランスを崩す可能性が高まり非常に危険です。
これは4点杖に限らず、全ての杖や歩行器全般に言えることですが、持つ位置・握る位置はとても大事です。
持つ位置によって歩行姿勢や安全性が大きく変わるので注意しましょう。
Gさんに関してはこの2つの課題は歩行訓練を繰り返していけば解決できると思われますので、引き続きみっちり訓練を行っていこうと思います。
こんな感じで歩行訓練を行っています。
まだまだ暑い時期は続くので熱中症に注意しながらの歩行訓練になりますが、猛暑の日は屋内での歩行訓練もやむを得ないですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
4点杖使用のメリット・デメリットや実際に試用されている方の歩行の様子と注意点をご紹介しました。
・1点杖を使っているけど下肢筋力が低下して歩行が不安だ
・歩行器を使うほどではないけど1点杖では怖い
・片麻痺で歩行器は使いにくいけど自力で歩きたい
という方は歩くことを必要以上に怖がったり、避けたりする前に一度4点杖を試してみてはいかがでしょうか?
歩行器を使っての歩行、歩行訓練の様子もご紹介していますので、合わせてご参考ください。
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