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人間にとって歩行は「外出する」「トイレに行く」「入浴する」等、日常生活においてきほんとなる重要な動作です。
歩行能力の低下は活動量を減少させます。
活動量が減れば体を動かす機会も減り、筋肉量も減少します。
筋肉量が減って歩行能力がさらに低下すれば、また活動量もさらに減少するという負のループにはまってしまいます。
今回は歩行能力の必要性や私が実際に行っている歩行訓練の簡単な例や考えをご紹介します。
歩行能力が低下すると・・・
転倒のリスクが高まる
活動量の低下・筋力の低下・歩行能力の低下は転倒の大きな要因にもなります。
歩行時の体幹バランスが不安定でふらついたり、つま先が上がらずつまずいたりで転倒されることが多いです。
転倒→骨折→さらなる動作能力低下を引き起こすというケースも多く見られます。
生活意欲も低下
歩行が思うようにいかないと、日常生活において意欲の低下をきたすことも少なくありません。
身体だけでなく気持ちの面でも悪影響を及ぼします。
そんな状況が長期間持続すると認知症やうつ症状を発症することもあり、さらに日常生活に支障をきたしてしまいます。
もっと重篤になると廃用症候群のリスクを高め、最終的に寝たきりになってしまう結果を招きかねません。
このように、歩行能力は単に日常生活を送るためだけに必要というわけではなく、自分らしく生きがいを持って生活を送るために必要な能力であると言えます。
リハビリ・機能訓練の開始時期
現在では発病、受傷後できるだけ早くリハビリ、訓練を開始することが推奨されています。
生活動作の中心となる歩行能力の維持・向上のため容体が安定し次第ベッド上でのリハビリ、訓練を始められるケースが多くなっています。
脳卒中片麻痺の方も例外ではなく、歩行能力の維持・向上の為ということはもちろん、筋力低下の防止、拘縮予防の為にも早期にリハビリ・訓練を開始し機能回復を目指します。
回復期の歩行訓練

デイサービスに来所される利用者様は病院でのリハビリを終え、回復期に入っておられる方がほとんどです。
利用者様個々の残存能力に合わせて歩行訓練を行います。
機能訓練指導員も本が一冊あると心強いです!
平行棒での歩行訓

安定した歩行能力を再獲得するために平行棒を利用して機能訓練を行います。
・平行棒を持って椅子座位⇔立位の訓練(立ち座り)
・平行棒を両手とも持って歩行訓練
・方向転換訓練
・台等を置いて段差昇降、跨ぎの訓練
・下肢・体幹の筋力トレーニング
平行棒を持っての歩行や運動は取り組みやすいとおっしゃる利用者様も多くモチベーションも維持しやすいと思います。
指導員は利用者様の能力や状況に合わせて介助、見守りを行い、転倒等の事故防止に十分留意しましょう。
歩行器・杖を用いた歩行訓練

片麻痺の方は左右のバランスが不安定なことが多いので歩行器や歩行車よりも杖を健側で持って歩行できるよう訓練を行うことが多いです。(片麻痺の度合いにもよりますが)
健側で杖を持ってもらい、患側から介助して歩行を行います。
下肢が上がりにくい、膝や足首が曲がりにくい等でぶん回し歩行になる方もいらっしゃるので利用者様の下肢が介助指導員と接触しないよう気を付けましょう。
歩行は単純に左右の下肢を交互に出すだけではなく、一方の下肢で地面を蹴り上げながら重心移動してもう一方の下肢で着地するという一連の動作を円滑に繰り返すことで成立しています。
歩行の補助として杖を使いますが、杖と下肢をどんなふうに動かすと安全かつ効率的に歩行できるかを意識させてあげることも重要です。
片麻痺の利用者様が歩行に慣れるまでは三動作歩行を私はお勧めしています。
三動作歩行とは
①まず杖を患側下肢に当たらないように斜め前に出す。
②患側下肢を出す。
③健側下肢を出す。
「1,2,3」と声をかけてあげるとリズムをとりやすくスムーズな動きになることが多いです。
慣れてくれば普通の歩行リズムと同じように杖と患側下をを同時に出して二動作歩行の練習をしていきます。
よく利用者様から「もっと速く歩かなアカンね」等、スピードを気にされる相談を受けます。
でも私がここで意識するのは下肢を動かすスピードを速くして速く歩くということではなく、
「ゆっくりでも大きく下肢を振り出す」ことです。
小股でちょこちょこ速く下肢を出すよりも歩幅をしっかりととって歩く方が安定感があり、下肢筋力の向上にもつながるしストレッチ効果も生み出されるからです。
ただ歩幅をしっかりと大きくとるためには、振り出す方の下肢を蹴り上げている時間が長くなるのでその分もう一方の下肢だけで踏ん張る時間も長くなり利用者様にとっては難しい動作になることもあります。
そのような時は平行棒で歩幅を大きくとる訓練も併用して訓練を進めています。

歩行器を使用されている方の歩行訓練も同様に歩幅をなるべく大きく取ってリズムを作って歩く意識づけをしています。
「1,2,3」とご本人にも声を出してもらいながら歩行するのも良いと思います。
私が注意して観る点としては歩行器と体との距離です。
これは歩行車でもいえることですが、結構歩行器や歩行車から体が離れて過ぎてしまって前傾姿勢気味に歩行される方が多いです。
これでは下肢をしっかりと振り出すことができなかったり、必要以上に上肢の力が必要になり、不安定で安全な歩行はできません。
[①歩行器を前に出す。]の時は一時的に歩行器から体が離れる態勢になりますが、下肢を振り出して体も前に進んだ状態では歩行器のスペースの中に体が納まっている、歩行器を把持している両手が体側に位置している状態がベストだと思います。

まとめ
今回は歩行能力の必要性と歩行訓練の簡単な実施例や注意点を簡単にご紹介してきました。
片麻痺の強さの度合いによって訓練中の介助、見守りの度合いも変わってきますし、歩行距離も調節して考えないといけません。
利用者様個々の目標をベースにして、身体機能・その日のご本人の体調を考慮しながら訓練を行っています。
歩行訓練をただ介助しながら、見守りしながら歩くだけではなく以上の点を注意して観てみると、また新たな問題点や発見が見つかることもありますので参考にして頂ければと思います。
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